複合軽量化における最小コストを実現するための熱可塑性樹脂の統合プロセス
長年にわたる射出成形の経験と卓越した自動化の専門知識をもつENGELは、大量に生産される複合部品のための費用対効果の高い生産コンセプトを開発しています。4月25日から27日までパリで開催されるJEC World 2023で、弊社は航空宇宙産業と自動車産業の両方で、高い生産効率と費用対効果を持続可能性と結びつけることができることを実証します。
ENGELのorganomeltプロセスにおいて、熱可塑性繊維複合プリフォーム(例えば熱可塑性シートとUDテープ)は、シンプルな工程で形成され、機能化されます。例えば、補強リブやアセンブリエレメントは、熱可塑性シートと同じマトリックス材料グループの熱可塑性プラスチックを用いて、熱成形後に同じ金型ですぐに成形されます。これにより、高効率で完全自動化された生産工程が可能になるだけでなく、循環型経済にも貢献することができます。一貫した熱可塑性樹脂のモノマテリアルアプローチは、その後の部品のリサイクルを容易にします。
ENGELは、パリのブースで、organomelt軽量化技術の大きな可能性を、実機展示で実証します。射出成形機ENGEL victory 660/160と多関節ロボットENGEL easixを用いて、航空旅客機の胴体部に使用される検査フラップを自動生産します。生産セルには、ENGELの自社開発・生産によるIRオーブンも設置されています。
航空宇宙と自動車の両分野における幅広いアプリケーションを紹介するため、3日間のフェア中、異なる2つの材料システムを交互に加工します。1つは、PEEKを基盤とする熱可塑性樹脂シートがPEEKでオーバーモールドされます。もう1つは、PPAベースの熱可塑性樹脂シートがPPAとコンビネーションを組んで加工される予定です。
熱可塑性樹脂シートはIRオーブンで加熱され、ロボットによって金型に取り込まれ、その場で成形され、すぐにオーバーモールドされます。補強リブや取り付けクリップも形成されます。
熱可塑性樹脂シートの加熱は、サイクルタイムを決定するための工程であり、品質にも関係してきます。プリフォームの厚さによって、加熱及び冷却の時間が決まります。また、加熱された熱可塑性樹脂シートを金型まで持っていく経路を短くすることで、金型までの間にシートが再び冷却されて可塑性が失われるのを防ぐことも重要です。そこで、タイバーレス技術を採用した射出成形機ENGEL victoryの強みが発揮されます。金型エリアへの容易なアクセスにより、IRオーブンを金型のすぐ近くに配置することが可能です。また、ロボットは干渉の輪郭を回避することなく、金型への最短経路をとることができます。どちらの要素もホットハンドリングを加速させることができ、プロセスの一貫性と高い部品品質を保証します。
ENGELの統合ソリューションシステムでは、ロボットとIRオーブンが射出成形機のCC300コントロールユニットに統合されています。これにより、全工程を機械のディスプレイを使って一元的に操作することができます。また、射出成形機、ロボット、IRオーブンが同じデータベースにアクセスし、互いの動作シーケンスを正確に調整できることも利点です。これにより、多くのアプリケーションでサイクルタイムを短縮することができます。
効率的に大量生産をするために開発されたENGELのorganomeltプロセスは、自動車産業で急速にその地位を確立しましたが、他の分野からも大きな関心を集めています。「航空宇宙産業からの引き合いが増えています。航空宇宙産業では、熱硬化性材料が熱可塑性プラスチックに取って代わられることが多くなっています。」と、ENGELのコンポジットテクノロジー事業開発マネージャー、Christian Wolfsberger氏は報告します。この発展の原動力は、コスト圧力と持続可能性の目標です。熱可塑性樹脂を一貫して使用することで、高度なプロセス統合が可能になり、パーツの機能性を完全に保証することができるのです。
通常、異なる材料システムといくつかの独立した生産工程が必要なところ、ENGEL organomeltは単一の統合生産セルで済みます。航空旅客機胴体部の検査用フラップは、その最たる例です。これまでは、熱硬化性樹脂のサンドイッチ部品に、フライス加工したアルミニウム部品をボルトで取り付けて生産していました。
航空業界では、コスト効率の向上とともに、CO2排出量の削減も重要な課題として掲げられています。航空機が最もCO2を排出するのは、飛行中です。このため、革新的な軽量化技術の活用は、特にこれらの技術が部品の耐用年数の終了時に材料サイクルを閉じるのに役立つ場合、ENGEL organomeltプロセスは純熱可塑性部品を製造するため、高く評価されます。
ENGELは、航空機製造におけるorganomeltプロセスに大きな可能性を見出しています。客室の構造や部品の必要量は増加の一途をたどっています。さらに、エアキャブを含むアーバンエアモビリティや、輸送用ドローンの利用が世界的に拡大しているロジスティクスの分野でも、さらなる可能性が広がっています。
ENGELは、弊社のお客様であるFACC(オーストリア、Ried im Innkreis)と協力して、JEC World 2023で検査フラップの製造を展示する予定です。その他のプロジェクトパートナーは、原材料をEn-singer(ドイツ・Nufringen)、Victrex(イギリス・Lancashire)、Kuraray(ドイツ・Hattersheim am Main)、部品設計とシミュレーションはNeue Materialien Fürth(ドイツ)が担当します。
また、ENGELのブースでは、別のパートナー企業が独自のエキスパートコーナーで展示を行います。オーストリア・Welsに本社を置くVoidsyは、アクティブサーモグラフィーを用いたゼロコンタクト・非破壊材料・部品試験用の超小型システムを発表します。
エキスパートコーナーでは、ENGEL organomeltプロセスを使用した自動車用アプリケーションをご紹介しています。特に、SPE賞を受賞したLucid Motorsのフロントエンドモジュールキャリアが紹介されています。この部品の量産は、ドイツ・Dettingen an der Ermsに本社を置くElringKlingerによるもので、ENGELのorganomeltプロセスを使用しています。フロントエンドモジュールキャリアは、車種によって、エアクーラーチャージャー、ヘッドランプモジュール、洗浄水タンク、ホーン、距離レーダーモジュール、エアインテークのサポートとして機能します。また、ボンネットロックの装着により、ボンネットをサポートします。
ElringKlingerは、合計37個のインサートにもかかわらず、加工前後の工程数とコストの両方を最小化することに成功しました。射出成形工程における極めて高いレベルの機能統合により、組み立てのオーバーヘッドが少なくなり、その結果、人件費を削減することができます。フロントエンドモジュールキャリアは、米国の自動車メーカーLucid Motorsの電気自動車第1号モデル「Air」に採用されています。
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ENGEL Japan 株式会社
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